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閉じ込められたアボジを返して

十一月号原稿   「月集」   二〇一四年  朴 貞 花

閉じ込められたアボジを返して
    

李煕子さんは一歳だった

アボジは日本軍の

侵略戦争に狩り出されたとき    

ハルモニの愛と

息子を思う朝夕の嘆きの言葉の中で

成長した李煕子さん

一九九二年に初めての消息

日・中戦の荒野で       

アボジが死を迎えたと――

一九九七年アボジは

「靖国」に合祀されていたと判明

家族には事前連絡も

事後報告もなく

戦争美化の「靖国」の

「霊璽簿」に日本名のアボジ

取り消しはせず

「朝鮮人だ」と軍人補償はしない

靖国合祀撤回の控訴を始めて二六年

「アボジを返して」と李煕子さん

一二七回の訪日

日本の裁判所は

合祀を正当化する

街宣車が連なる

耳を劈く大騒音の中

「反ヤスクニキャンドルデモ」

キャンドルを握りしめ私も歩く

途切れのないヘイトスピーチの中

キャンドルを高く掲げ

李煕子さんと叫ぶ

「ヤスクニの闇に灯りを」

☆もう、投稿を止めるしかないと思っていた「新日本歌人」だったが、送られてきた11月号に私の作品が「月集」に選ばれていた。ただ、ビックリするだけだった。まだ私を応援して下さる選者がいらっしゃったのである。この度、私の作品を「月集」に推薦下さった選者は、東北大地震と原発事件が起きて、短歌が詠めなくなり・初めて「行わけ作品」に取り掛かった時から、何度か「月集」に推薦して下さっている。有難くて、嬉しくて、涙が零れ落ちた。

☆李煕子さんの来日に一泊2日の日程でお世話をすることを頼まれたことがあった。李煕子さんを日本に招待したグループが、私が朝鮮語で会話が出来るとのことで依頼した。同胞という事で直ぐに打ち解けて時間を忘れていろいろな話をした。
李煕子さんは、父親の顔も知らない筈なのに、育てて下さったハルモニが毎日、毎日、朝な夕なにアボジの話をしながら育てて下さったので、まるでアボジと暮らしたことがあるように、アボジの事を思い浮かべることが出来るようになったとの事であった。ハルモニがどんなにか息子さんの事を思い続けていらっしゃって、忘れられないでおられたのであろうかと、胸の痛む重い言葉であった。

 今年の「反ヤスクニキャンドルデモ」に参加して久しぶりに、李煕子さんに会うことが出来た。あの日から10年以上過ぎている。私の顔よりも声が記憶を呼び起こしたと彼女は私に言った。
誰かに誘われたわけでもなく、一枚のチラシを見て参加した。オモニの事を最優先にして暮らしてきたこの10年間だった。オモニが突然に亡くなってしまったことで、支えを失った状態になり、心が落ち着かずに出かける事が多くなった中での一つの行動による参加であった。

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○薔薇は本当に強い花だ。自分を守る為に棘を持っている。私には自分を守る為のものは何もないが、こんな狭いところでも、しっかりと綺麗な花を咲かせ、自分の務めを果たす薔薇の強さにはあやかりたいと思う。私の守護神のオモニが逝ってしまってからは、強くならなければと何時も自分に言い聞かせるようになった。



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by pcflily | 2014-10-26 21:58 | アリランエッセー | Comments(2)  

金子文子は自己を生きた

金子文子は自己を生きた 二月号 二〇一三年 朴貞花  

      ――物的証拠は一つもない大逆事件――

関東大震災

デマを流し「保護検束」の

朝鮮人と社会主義者は

虐殺された

金子文子と夫の朴烈

死刑の宣告を受け――

二十二歳の文子は

獄中で縊死した

父は入籍をせず

母と文子を捨て

文子の叔母と結婚

九歳の文子を

祖母は朝鮮に連れ出し

飢餓・酷使・虐待を続けた

度重なる肉親の裏切りと

世間の差別と冷遇――

闘う道を選んだ文子

同志として信頼し愛した

朝鮮人の朴烈と

天皇制に反旗を翻す

人間の絶対平等を説き

転向の拒否を続け

獄中に三年――

歌を詠み自叙伝を著した

『裁判記録』に遺した言葉

地上の平等な人間生活を

蹂躙する権力という

悪魔の代表者は

天皇、皇太子である

○家出をして上京して何年かは、室生犀星の詩・故郷は遠くにありて思うもの そして悲しく歌うものと口遊んだ。帰りたいと思うほどの良い思い出はなかったが、両親がいることで思い出された。
 実家を取り壊すと言うのでオモニの遺品の整理に二度目の帰郷で駅に据え置かれていた機関車に気が付きカメラにおさめた。
高校に通う為には一時間このような汽車に乗った。トンネルが多く、そのたびに窓を閉めた。閉めないでいると黒い煤で顔が汚れた。石炭で走っていたからだろう。

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by pcflily | 2014-10-15 15:56 | アリランエッセー | Comments(2)