一人も殺さなかった渡部良三

★一人も殺さなかった渡部良三   
             九月号 二〇一三年  朴貞花

    ―― 歌集『小さな抵抗』――      

      

十五年戦争は          

アジアの民に銃を向け

略奪・強姦・虐殺・焼き討ち――― 

      

捕虜一人を

新兵十人が突き刺し

地に額をつけ

子の命の助けを乞う母を刺す

血にまみれ深傷の老婆を

幾度も打ち敲き

井戸に投げ入れる

刺突銃は捕虜刺殺専用

天皇の給う道と

捕虜を殺す練習―――

教官は胸張り

気合鋭く刺し殺しニヤニヤ笑う

刺し殺す数など案ずるな

まっしぐらに突け~~~

「捕虜殺すは天皇の命令」と言う

教官の命令に逆らい続け

一人も殺さなかった渡部良三

天皇の賜える罰と

二等兵・渡辺良三に与えられた

水責め・匍匐・捧げ銃

対抗ビンタ・ゲートルリンチ

厠で詠み、衣服に縫い付けた歌

日本軍の実態を伝えむと

歌集『小さな抵抗』

あの時代には逆らえなかったと

幾千万の兵士達

幾星霜 口を閉ざし続ける

☆歌集『小さな抵抗』を読んで衝撃を受けた。何時もそうなのだが、これを書こうと考えるのではなくその時に出会ったことで私の琴線に触れると作品にしようと思い込んでしまい、他の事は何も考えられなくなるのが常である。けれども、投稿した作品は選者に8首のうち5首を捨てられてしまった。(現在は引退した選者)
こんなに大事なことを短歌に詠んでいることを、どうしても知って欲しいとの思い、短歌でこのような事を表現している人もいるのに、甘い抒情的な歌だけを大切にするのかと、もう一度書き直して投稿した。偶然に同じ選者になったが、この度は6首を取って下さった。


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◎今朝の居間から見た朝日
















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by pcflily | 2014-11-21 20:14 | アリランエッセー | Comments(2)  

Commented by Takeshi Nimura at 2014-11-24 11:19 x
甘い抒情的な歌だけを大切にするのか」というCFさまのご指摘に詩歌の世界の複雑さを垣間見ました。「プロレタリア文学は文学ではない」という友人が語ったことを思い出しています。美しいもの心和むものが文芸とは限らない、心のギリギリのところに訴えることこそ芸術だ、と私は説明しました。でも、多くの人々は心地よさを求めました。悲喜があってこそ文芸のはず。悲哀や憎悪、抵抗や検証も大切な文芸だと私は思います。志を貫き下さい。
Commented by pcflily at 2014-11-24 20:52
コメントを有難うございます。
まともに学ぶこともないままに、何も知らないままに、思いをそのまま、こうして書き連ねていて良いものかと、時々不安になります。歌は訴えるものであると思い続けてきました。身辺の喜怒哀楽だけを詠んでいられたら、どんなにか良いだろうと思います。
かつて近藤芳美先生と在日の詩人の雑誌に載ったトークの記事の中で、在日朝鮮人の詩人が愛の歌を詠める日本人が羨ましい僕達にはその余裕がないと言っていたのを思い出します。

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