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「朝日歌壇」入選歌1998年

朝日歌壇入選歌

    1998年1月26日   馬場あき子選

  金大中氏選ばれし喜び分かち合う午後の茶房に冬日やさしく

    1998年3月8日    近藤芳美選

  また一人朝鮮籍を捨つ帰国せし老父に会わむ自由を得むと

    1998年4月6日    近藤芳美選

  降り止まぬ雪にふるさとも埋もれいむベッドのオモニと歌う「故郷雪」(こひゃんそる)

   評 今はベッドに寝るだけの母と、去ってきた韓国の雪を思っているのだろう。「故郷雪」はコヒャンソルと読ませている。第1首の作者も幼い日に、母に抱かれて日本に渡ったという。
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〇現在、住んでいる家の居間から見える雪景色。家は高台にあるので、見晴らしが良く、座って見える景色は空が大方を占めている。これは立って窓辺に寄り写した。

    1998年5月3日    近藤芳美選

   日本の土を再び踏まぬこと決めて土葬の待つ祖国に帰るアボジ

    1998年6月8日

   風邪の子は保育所も預からず上役に休暇願えば辞めよと言わるる

    1998年6月22日    馬場あき子選   近藤芳美選

  ☆父母と弟妹五人帰りたる祖国は飢餓に病み君は末期癌に病む
  
   評  第二首は肉親の多くが住む祖国の状況を愁えつつ、現実としては末期癌と闘う「君」を見る。ニつの生の悲痛はそのまま自分の悲痛につながるものだ。  馬場あき子

    1998年10月5日    島田修二選

   原爆を落としし米国推したりきノーベル平和賞に丸木夫妻を

   評  日本人という枠を外して、相対化して見る目が歌を生かす。第一首、原爆の日本への投下を正当とするアメリカにあって、丸木夫妻を平和賞に推した学者をさす。作者が在日の方であることも更に暗示的だ。

     1998年10月28日   近藤芳美選

    「脳内革命」「チョコレート革命」革命の日本の空に米機の轟音

     1998年11月8日     近藤芳美選

    乳飲み児を抱きて集う同胞のここより他に拠りどのなくて


☆「故郷雪」は私が初めて覚えた朝鮮の歌だ。子供の頃、何時も蓄音機から朝鮮の歌が流れていたので、自然に覚えた。その頃は歌の内容は分からなかったのに、悲しい、寂しいメロディーにひかれたのであろう。
内容が分かってからはもっと好きになった。朝鮮の記憶は何もないのに、流浪の民になってしまった悲しさ寂しさを感じていた。ひとひらの雪をみても、ふたひらの雪を見ても故郷の雪を思い出す。頬に落つる雪も袖に落つる雪も故郷の雪を思い出す。行方の定まらぬ旅人の悲しみに浸っていた。

オモニは、唯一の私の歌の聞き手だった。久し振りに会ったオモニは、言葉を失ってしまっているが、私の歌は忘れていなかった。体全体を動かして笑顔いっぱいで喜んで、調子を合わせてくれた。
ホームを訪ねて歌う歌には楽しい歌だけを歌うので、この度も「故郷雪」は歌えなかった。朝鮮民謡の中でも楽しい歌を選んで歌った。
     

         

by pcflily | 2013-04-17 23:02 | 貞花の短歌『身世打鈴』 | Comments(0)  

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